悩みの原因と治し方

参考資料:(社)日本プロセラピスト養成協会より抜粋

トラウマの原因

「心の悩み」「心理的トラウマ」の原因

あらゆる心の悩み、心理的トラウマの原因、それは、幼少期に主として両親との関わりを通して作られる「リミッティング・ビリーフ(制限を作り出す思い込み)」に存在します。

リミッティング・ビリーフとは、私たちの物の見方や考え方、感じ方を制限する「思い込み」や「固定観念」のことを言います。

リミッティング・ビリーフは、本来は自然に行なわれるはずの思考や感情、行動に対して制限的に作用し、悩みや苦しみ、痛み、症状等を作り出す元の原因となります。

ですから、おおもとの原因であるリミッティング・ビリーフを正確に特定して取り除くことで、慢性的に繰り返す心の悩みや苦しみ、痛み、長引く心因性の病が根本的に解消します。


リミッティング・ビリーフは、こうして作られる

私たち人間は、生まれたときは、みな赤ちゃんです。

赤ちゃんは自分の気持ちに素直で、欲しいものは要求し、いらないものは拒否します。

何か気に入らないことがあるときは、泣いたり怒ったりして、すぐに周りの大人に知らせます。

そうやって、赤ちゃんは「ありのままの自分」をあらわにした状態で、自分の思うままに自分らしい人生を生きています。

心で望んでいることと行動とが常に一致してします。

ところが、赤ちゃんから子どもへと成長するにつれて、自分が望むようにではなく、周囲に反応して発言をしたり行動をする自分を作り上げるようになります。

たとえば、家族の中では母親や父親から怒られるようなことは避けて、できるだけ親から愛されるような振る舞いをするようになります。

こうしたことは、家族の中だけにとどまりません。

子どものときに身につけたパターンは、成長して学校に行くようになったり、大人になって社会に出てからも強化され続けます。

なぜなら、学校や社会からも、周囲に合わせて発言や行動をするように求められるからです。

日本社会は個人のユニークさよりも、集団としての効果性や効率性をより重視するのでなおさらです。

あなたがあなたらしく振る舞うことよりも、組織の中で期待される役割をきちんとこなすことが求められます。

こうした幼少期から子どもの時期の経験を通して、たとえば、《ありのままの自分は誰(親)からも愛されない》、《何かができる自分には価値があるけれども、ありのままの自分には価値がない》といったリミッティング・ビリーフが心の中に刷り込まれます。

その結果、「人から自分がどう思われるかが気になって仕方がない」「人に自分の言いたいことが言えない」「人から好かれるために(嫌われないように)、いつも周囲の人たちの機嫌取りをしている」「人から認めて(受け入れて)もらおうとして、自分を犠牲にしてまで周囲の人間を満足させようと必死で頑張る」「周囲から期待される役割に縛(しば)られて、自分の人生を生きていない」といったことが起こります。

これが、普段、あなたが感じている“生きづらさ”の正体です。

人から愛されて、受け入れられるためには、《ありのままの自分であってはいけない》、《親を喜ばせたり、他人の期待に応えなくてはならない》というリミッティング・ビリーフが恐れの感情を作り出し、あなたが人前で自分らしく自然に振る舞うのを邪魔するのです。

その結果、あなたは、「なぜ私は人の顔色ばかり気にして生きているのだろう?」「なぜ私は苦しいのに周囲の期待通りに走り続けているのだろう?」「なぜ私は人に自分の素直な気持ちを伝えられないのだろう?」「なぜ私はリラックスして人生を楽しめないのだろう?」と悩みながらも、どうしてよいかわからずに、一生懸命、周囲の期待に応える努力を続けてきたのです。

リミッティングビリーフ


24のリミッティング・ビリーフ(制限を作り出す思い込み)

幼少期に両親からネガティブなメッセージを与えられると、子どもはそれをあたかも絶対的な真実であるかのように思い込んで心の中に取り込んだ後、いずれは外的に与えられたものであることさえも忘れて無意識化してしまいます。

それが「リミッティング・ビリーフ(制限を作り出す思い込み)」となって、後々、人生の大きな悩みや心理的トラウマとなって表出します。

以下に、セラピーの対象となりうる代表的な24のリミッティング・ビリーフと、関連する主な症状、刷り込みの場面を示します。参考にして下さい。



《生存》に関するリミッティング・ビリーフ

(1−1)《存在してはいけない》

主訴

もし、あなたが自殺や他殺(自傷や他傷)、「私なんていない方が・・・」「もう、どこかに消えてしまいたい・・・」といったようなことを考えたことがあるならば、《存在してはいけない》を持っている(程度は別として)。うつ病の経験者は、《存在してはいけない》を必ず持っていると考えられる。

中には、心の中で感じている《存在してはいけない》という感覚に反抗して、周囲の人や世の中に対して自分の存在や生き様を見せつけようと反抗的な生き方をする者もいる(「みんな見てくれ。これがオレの生き様だ!」)。「死にたい」という感覚を感じる

人を殺したくなる、人の死を期待する(「みんな死ねばいいのに・・・」)
自分や他人が死ぬところを空想してしまう
自傷行為(リストカット等)+《感じてはいけない》
他傷行為、他傷観念
「自分の存在には価値がない」「自分なんていない方がいい」と思ってしまう
どこかに消えていなくなってしまいたいと思う
事故や大きな怪我を何度も繰り返す
無謀な運転、バンジージャンプ、スカイダイビング等
うつ、抑うつ状態
摂食障害(自分の命を大切にしない、生きるための栄養を摂取しない)+《感じてはいけない》
依存症(アルコール、薬物、ヘビースモーカー等)
ワーカーホリック(過労死)
刷り込みの場面

「お前はいらない子だ」「お前がお腹にいなければ、お母さんはお父さんなんかと結婚しなかったし、もっと幸せになれたのに・・・」のように、メッセージが言語的に伝えられる場合と、「生まれてきた瞬間に自分の誕生を喜ばない両親の表情や態度を感じた」「赤ん坊のときに手荒く抱っこされた」「食事のときに両親から怖い顔や嫌そうな顔をされた」「身体的な虐待を加えられた」のように、非言語的に伝えられる場合とがある。

また、「親の自殺」や「親の投げやりな生き方を見て育った」等がきっかけとなって、子どもの心に《存在してはいけない》が刷り込まれる場合もある。学校等でのいじめが原因となる場合もある。

親から「お前はいらない子だ」「私が不幸なのはお前のせいだ」等と言われた
親の無視・無関心(ネグレクト)
性的、身体的、精神的虐待
いじめ
親の自殺
投げやりな生き方をする親を見て育った

(1−2−1)《ありのままの自分であってはいけない》

主訴

《ありのままの自分であってはいけない》を持つ者は、成績や運動、身体、性格、その他の面で、「ありのままの自分ではダメ」「誰々の様でないといけない」という感覚を感じ、自分らしい生き方をしない。

あるいは、《ありのままの自分であってはいけない》という内的な感覚に反抗して、「私! 私!」「俺が! 俺が!」と、過剰に自分を主張する者もいる。

「ありのままの自分ではダメ」と思ってしまう
「誰々の様でないといけない」と感じる(成績、運動、身体、性格等の面で)
「誰々のような容姿でないといけない」と感じる。特に、摂食障害の女性。容姿や服装、世間体に関して口うるさく、何にでもきちんとしている母親を持つ女性(女の子)に多い
「親が望むような自分でないといけない」と感じる
「自分もお父さん(お母さん)の様でないといけない」と感じる
劣等感が強い(「誰々と比べて私は・・・」)
他人がほめられているのを見たり、聞いたりすると嫌な気分がする
過剰な競争心
自分は何かが違う感じがする(自分が親の理想と違うから)
理由なく自分に罪悪感を感じる
「私! 私!」「俺が! 俺が!」と過剰に自分を主張する。
「No.1 よりオンリーワン」への過剰なこだわり。
刷り込みの場面

「親がいつも他の兄弟や姉妹ばかりを可愛がった」「親から常に他の子どもたちと比較された」のような場合に、《ありのままの自分であってはいけない》が刷り込まれる。

また、「親から人格的に否定され続けた」「何でもきちっとしている模範的な母親(父親)に育てられた」といったような場合にも、子どもが《ありのままの自分であってはいけない》と思い込むことがある。

特に、摂食障害(拒食症)に悩む女性の場合、容姿や服装等、見た目に関して口うるさい母親に育てられた結果、自分の外見に関して否定的なセルフ・イメージを持つようになり、《ありのままの自分であってはいけない》が刷り込まれている場合が多い。

親がいつも他の兄弟や姉妹ばかりを可愛がった
親からいつも他の子たちと比較された
「だからお前はダメ」といったように、親から人格的に否定された
流産や病気、交通事故等が原因で、幼少期に死に別れた兄、または姉がいる。その結果、「僕(私)は死んだお兄(姉)ちゃんの代わりを生きなきゃいけない」と思い込み、自分らしさを失った
何でもきちっとしている模範的な母親(父親)を見て育ち、「自分も女(男)として母親(父親)のようでなければならない」と思い込んだ
容姿や服装等の見た目に関して口うるさい親に育てられた。特に、摂食障害の女性(女の子)

(1−2−2)《自分の性別であってはいけない》

主訴

《自分の性別であってはいけない》を持つ者は、心のどこかで「自分は違う性別で生まれてくるべきだった」と思っており、実際の自分の性別に対して違和感を感じる。

「女性(男性)が男性(女性)っぽい服装や、振る舞い、言葉使いをする」「同性や異性に対して、過剰にライバル心や攻撃心を持つ」といった症状を示す。また、女性の場合、月経前症候群(Pre-Menstrual Syndrome)や不妊の原因の一つとなることがある。

異性と近づくことに違和感を感じる
女性が、女性らしい格好をしない(スカートを履かない、女性らしい色の服装をしない、短髪、化粧をしない等)
「女らしさ」「男らしさ」という言葉に過剰反応する
同性に対して批判的、攻撃的になる
「女性で、男にだけは負けたくない」という気持ちが強く、意地になって働く。やられたらやり返す(「女だからって、なめるなよ・・・」)
自分は何かが違う感じがする
女性が、ことさらに女性らしさ(格好など)にこだわる
月経前症候群(PMS:Pre-Menstrual Syndrome)
月経不順、生理痛、不正出血
不妊
男性の場合、感情的になりやすい(DV をはたらく男性の多くが「男であってはいけない」を持っている)
男性らしさ(見た目や強さ)への過剰なこだわり(反抗的決断)
刷り込みの場面

《自分の性別であってはいけない》は、親が望んでいたのとは違った性別で生まれてきた子どもに対して、「お父さんもお母さんも、お前が女(男)の子だったからガッカリしたんだよ。本当は男(女)の子が欲しかったんだよ」のようなメッセージを通して刷り込まれる。

また、言葉では直接伝えなくとも、「息子に可愛いレースやフリルのついた服を着せて可愛がる」「娘に男の子のような格好をさせて、元気に遊ばせる」といったように、非言語的なメッセージによっても刷り込まれる。

親から「お前は異性に生まれてきて欲しかった」「男(女)の子だったから、お父さん、お母さんはガッカリした」等と言われた
親が異性の兄弟、姉妹ばかりを可愛いがった
親から「お前みたいな性格は異性に向いている」と言われた
(女の子が)「男の子には負けるな」「女に生まれたら損」「女は勉強や仕事をしなくていい」「女はお嫁さんになるのが一番の幸せ」等と母親から言い聞かされた
(男の子が)「男は可愛くないからダメ」「男はやさしくないからダメ」等と言い聞かされた
性的虐待を受けたことがある(「私が女だからこんな目に遭うんだ・・・」)

(1−3)《見えてはいけない》

主訴

《見えてはいけない》を持つ者は、人よりできることも、人よりできないことも「見える(目立つ)」ことにつながるので、学校や職場などでは常に平均的で人並みであろうと努力する。

存在感がなく、集団の中で居ても目立たないのが特徴である。《見えてはいけない》の回復過程にある人や反抗的決断の人は、よく見える(目立つ)。

存在感を示したり、目立ったりするのが苦手、恐い
目立たないように周囲に同化していないといけないと感じる
周りのみんなと同じ、横並びでないといけないと感じる
自分が目立っていないかどうか、他の人がしていることが気になる
(目立つので)好みの服を買えない。買っても着れない
自己主張ができない
大きな声を出せない(「声が小さい」と人から言われる)
対人恐怖症
刷り込みの場面

子どもの頃、目立ったことで嫌な目や危険な目に遭った際に、《見えてはいけない》が刷り込まれる。また、目立つ存在になろうとしない親の姿をお手本にして、子どもが真似をする場合もある。

すぐに暴力を振るう、いつも大声で怒鳴る等、とても恐い親だったので、親に見つかって怒られないように、いつも隠れて目立たないようにしていた
人から見える存在だと叩かれるので、隠れるようにしていた(いじめなど)
親から「目立ってはいけない」「出る杭は打たれる」等と言われて育った
親が目立たない人だったので、それを見て「自分も目立たない方がいい」と思い込んだ
親が目立つ人だったので、それを見て「自分は目立たない方がいい」と思い込んだ

(1−4)《愛着を感じてはいけない》

主訴

《愛着を感じてはいけない》を持つ者は、幼少期に親との間に健全で安心を与えてくれる愛着(愛情)関係を築き損なった経験から、大人になって、愛着を伴う人間関係を回避したり、愛着というものの存在に対して違和感や恐怖感を感じる。

また、目に見えない愛情の存在を否定する代わりに、お金や地位、立場、物等、目に見えるもの、手で触れられるもののみを執拗に追い求め、愛情の確認材料とする者もいる。

「人から見捨てられるのではないか」「自分の周りから人がいなくなってしまうのではないか」「最後は一人ぼっちになるのではないか」という非常に強い不安(恐怖)を感じる
人から見捨てられないための努力をしている
目をつむって顔を洗えない(怖い)
夜、電気を消して寝れない(怖い)
戸を閉めてトイレができない(怖い)
愛情のぬくもり、温かさを感じられない
赤ちゃんや小さい子どもを見ても可愛いと感じられない
他人が甘えているのを見ると嫌悪感がする
人から愛されているという感覚がない
相手の愛情を疑ってしまう
人を愛するのが恐い
「自分のことを愛してくれる人なんかいない」と思っている
「この世に愛情なんてものは存在しない」と思っている
嫉妬心、独占欲が強い
目に見えない愛情を信じない代わりに、電話やメールの回数、プレゼントの金額等、目に見えるものにだけ頼って愛情のありなしを判断し、そうしたものを執拗に追い求める
「あれをしてくれない。これをしてくれない。だから愛してくれていない」と執拗に訴える
「まだ欲しい。いつまでも欲しい」と求め続けて、それでいて決して満足しない(応じないとリストカットしたり、自殺をほのめかすことも・・・)
配偶者や恋人への暴力(男女とも)
刷り込みの場面

幼少期に親との間に健全で安心を与えてくれる愛着(愛情)関係を築き損なった経験から、《愛着を感じてはいけない》が刷り込まれる。

幼少期に、親から愛情を与えられなかった
幼少期に、親に愛情を求めたら拒絶された
幼少期に、親から放置、無視をされた
幼少期に、親から虐待された
幼少期に、施設に入れられたり、親戚に預けられたりした(親と離された)
幼少期に、親が病気で十分に甘えられなかった(例えば、産後うつ等)
幼少期に、親が何らかの理由で精神的な安定を欠いていて、子どもの(感情的な)ニーズに十分対応できなかった

《人間関係》に関するリミッティング・ビリーフ

(2−1)《人に近づいてはいけない》

主訴

《人に近づいてはいけない》を持つ者は、人に近づくことや、人と親密な人間関係を持つことに対して、恐怖を感じる。その結果、人間関係がギクシャクしたり、不適切な人間関係を築く傾向がある。

また、あえて過剰に人に近づこうと努力する者や、わざと相手から嫌われたり、不審がられるような、おかしな近づき方をする者、社会性を欠いた近づき方をする者もいる(ストーカーなど)。

怖くて人に近づけない
人と親密になれない。仲が良くなってくると自分の方から壁を作る
仲の良い友人がいない
近づいて欲しくない雰囲気を出している
子ども、男性、女性、年上の人等、特定の人に近づけない
人と一緒にいるとリラックスできない
人とハグができない
人から触れられたり、人に触れるのが嫌
人に自分の物を触られるのが嫌
人と腹を割った感情レベルの話しができない。自分の本音を言えない。
ケンカができない(心理的に近づけないから)
異性関係にだらしがない、遊び人(肉体関係は持つが、心理的には近づかない)
自分の本心を悟られないように、または、触れられたくない話題を避けるために、自分の方からずっとしゃべり続ける
刷り込みの場面

子どもを嫌う親や機嫌が急変しやすい親、子どもに無関心な親、虐待する親等に育てられた子どもが、「人(親)に近づくと拒絶されるかもしれない」「人(親)に近づくことは危険で怖いことだ」と思い込み、《人に近づいてはいけない》が刷り込まれる。

また、親や仲の良い友人と離別・死別した際に、「仲良くなってもどうせ死んでいなくなってしまうのだから、人に近づいたからって何になるんだ」と心に決めることもある。

「親が怖い、機嫌が急変しやすい、何を考えているかわからない、自分のことを嫌っている、自分に無関心」といったような理由で、子どもの頃に親に安心して近づけなかった
親から虐待を受けた
体罰
学校等でいじめを経験し、「こんな目に遭うのなら、人に近づくのを止めよう」と心に決めた
子どもの頃に親や親しみを感じていた人と死別し、「仲良くなってもどうせ死んでいなくなってしまうのだから、二度と人には近づかないでおこう」と心に決めた
子どもの頃、親からスキンシップ(身体に触れるコミュニケーション)を与えられなかった
親が親しい人付き合いをしない人だった
親から「○○君とは遊ぶな」「○○の職業の人とは付き合うな」「金持ちは悪人だ」等と言い聞かされ、特定の人に近づけなくなった
(2−2)《人を信用してはいけない》

主訴

《人を信用してはいけない》を持つ者は、人を信用できない。自分でコントロールすることが可能な、人物やお金、地位、立場、物のみを信じようとする者もいる。さらに追い詰められると、信じられる人がいないことに絶望して、「この世に信じられるものは自分自身しかいない」との結論に達する。

また、わざわざ信用できない人物を信用しては裏切られる経験を繰り返し、《人を信用してはいけない》を強化する。

人を信用できない
人を信用するという意味、感覚がわからない
人との距離感がわからない
嫉妬心が強い(パートナーを疑っているから)
グループ内で自分の悪口を言われているような気がする
信用できない人、嫌いな人に近づいては、裏切られる経験を繰り返す
「人を信用しなくてはならない」「人を信用したい」という気持ちが過剰に強い
自分の理想に合った「信用できる人探し」を続けている(そして、そのような人は決して見つからない)
境界性・自己愛性・反社会性・演技性パーソナリティ障害(たとえば、境界性の場合、信用できる人かどうかの確認を繰り返すが、決して信用はしない)
刷り込みの場面

親に無条件の愛を求めたけれども得られなかった経験や、親に裏切られて傷付いた体験から、「人は自分を傷付ける存在であり、人を信用することは危険である」と思い込み、《信用してはいけない》が刷り込まれる。

「普段は優しい親が急に怒って体罰を加える」といったように、態度を突然変える親を安心して信用できなかった
親がすぐに約束を破る人だった
親から裏切られた経験がある
親から無条件の愛を与えられなかった
親から「人を信じてはいけない」と言われて育った
友人からのいじめ(裏切り)

(2−3)《集団に属してはいけない》

主訴

《集団に属してはいけない》を持つ者は、集団の中で、孤立感や疎外感を感じる。また、集団の中にいて居心地が悪いので、組織やグループに対して不平や不満を持ちやすい。

友人からのいじめ(裏切り)
パーティーや飲み会の集まり等、集団の中で孤立感や疎外感を感じて溶け込めない
組織の中で所属感がなく、「ここは自分の居るべき場所ではない」「自分だけ浮いている」と感じる
団体行動が苦手
集団の中で、他の人たちと同じように考えたり、行動したりできない
組織に対して不平、不満を持ちやすい(なぜなら、集団内で居心地が良くないから)
一匹狼的な生き方をする
あまり興味がないグループに加わろうとする
刷り込みの場面

幼少の頃にまとまりがなくバラバラな家族の中で育ったために、家族の中で集団に所属する感覚を獲得し損ねたことが原因で、《集団に属してはいけない》が刷り込まれる。

また、帰国子女や特別に良い家柄、特別に貧乏な家庭で育ったために、小学校や中学校の集団の中で「自分は他のみんなとは違う」と感じて、《集団に属してはいけない》が刷り込まれることも多い。

グループや組織に加わることや、団体活動ができない親の姿をお手本にして、刷り込まれることもある。

子どもの頃に、家族と離れて育った
子どもの頃に、家族がバラバラだった
子どもの頃に海外や良い家柄、貧乏な家庭に育ったために、「自分は他のみんなとは違う」と感じながら育った
学校でいじめや仲間はずれを経験した
親が人の仲間や組織、団体などに加わらない人だった
親から「団体に入るな」「集団には関るとロクなことがない」と言われて育った

(2−4)《感謝をしてはいけない》

主訴

《感謝をしてはいけない》を持つ者は、「感謝の気持ちを感じられない」「人にしてもらっていることに気づかない」といった特徴を持つ。

心から感謝の気持ちを感じていないのに、過剰に「ありがとう」「感謝しています」と連発する者もいる。本人に自覚症状がない場合が多いので、セラピーを受けに来ることはまずない。

人に対する感謝の気持ちや、「ありがとう」という気持ちを感じられない
人から「やってもらっていること」に気がついていない
「してもらっていないこと」「足りないこと」「満たされていないこと」ばかりを訴える
「ありがとう」と言ったり、感謝の気持ちを感じてはいけない気がする
心から感謝の気持ちを感じているわけではないのに、ことさらに「ありがとう」「感謝しています」を連発する
刷り込みの場面

感謝をしたり、「ありがとう」を言わない家庭で育ったことが原因で、《感謝をしてはいけない》が刷り込まれる。また、感謝をしない親をお手本にして、《感謝をしてはいけない》が刷り込まれることもある。

家族の中で、「ありがとう」と言ったり、言われたり、感謝の気持ちを表現するやり取りがなかった
親が「ありがとう」を言ったり、人に対して感謝をしない人だった

《成長》に関するリミッティング・ビリーフ

(3−1)《子どもであってはいけない》

主訴

《子どもであってはいけない》を持つ者は、人に甘えることや人に頼ること、わがままであることや自分の気持ちを優先することを我慢して、自分よりも他人(の気持ち)を優先しようとする。

誰からも気に入られたいという気持ちが強く、常に「いい子」や「良い人」であろうとする。人の面倒見が非常によく、可愛そうな立場の人に対して過度に共感的、同情的である。

まれではあるが、心の中で感じている「良い子でなければならない」という不自由な感覚に抵抗して、あえて反抗的であったり、過剰に自由に振舞おうとする者もいる。

「ああしろ」「こうしろ」と、人に対して指示的、支配的になってしまう(親的な立場を取りたがる)
何でも率先してやらなければ気がすまない
本当は自分が面倒を見て欲しいのに、人の面倒をみる役回りになってしまう
かわいそうな人に過度に共感的で、同情的(カウンセラー、セラピスト、医師、看護師、福祉関係者等)
誰からも気に入られたい気持ちが強く、人からどう思われるかが気になる
人に気を使いすぎる
誰に対しても常に「いい子」「良い人」であろうとする
人に合わせて本心でないことを言ってしまう
わがままを言えない
人に甘えられない
感情表現が苦手で、喜怒哀楽の感情を自然に表現できない
「欲しい/いらない」「好き/嫌い」といった意思表示ができない
人前ではしゃげない
子どもや子どもっぽい人が苦手で、見ているとイライラする
パニック症(広場恐怖、パニック発作、予期不安)
全般性不安障害
対人恐怖症
刷り込みの場面

《子どもであってはいけない》は、親が自分の子どもに対しても子どもらしくあることを許さない状況で刷り込まれる。長男や長女に多いリミッティング・ビリーフである。

親のしつけが厳しかった
両親とも真面目で、いつもきちっとした人だった
親から過度な期待をかけられた
親から「あなたはお兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから」と言われて、甘えさせてもらえなかった
親から「泣くのは赤ちゃんだけよ」等と言われ、子どもっぽい振る舞いを許されなかった
自由や楽しみ、子どもらしい活動を禁止されていた
いつも「良い子」を演じることで、親から愛されようとした
子どもの頃に父親を亡くし、「自分がしっかりしなくては」「自分が残りの家族の面倒を見よう」と決断した
両親のケンカが絶えず、それを見るたびに「自分が何とかしなければ」と思っていた
いつも親が大変そう(忙しそう)にしていて、「自分だけ遊んではいけない」「自分もシッカリしなければ」と決断した
うつ状態の親を喜ばせようとしたり、子どもの頃から親の感情の面倒をみて、「自分が親を幸せにしてあげよう」と決断した
性的、肉体的虐待を受けたときに、「子どもだからこんな風に虐げられたんだ」と思い込んだ

(3−2)《成長してはいけない》

主訴

《成長してはいけない》を持つことは、心理的に子どものままで居続けることを意味する。

《成長してはいけない》を持つ者は、心理的にまだ子どもであるため、義務感や使命感が希薄である。

その結果、「依存的で、自分で解決しようとしない」「自分の力で深く考えられない」「最後までやり遂げられない」「いつも時間に遅れる」「うっかりミスを繰り返す」といったような子ども的な振る舞いを示す。また、心理的に子どもであるだけでなく、身体的な発育の遅れや、容姿、服装が実際の年令よりも幼い等、外見的にも子どもであることが表れる。

《成長してはいけない》は、男性のロリータ・コンプレックス(幼女・少女にのみ性欲を感じる異常心理)、女性のファーザー・コンプレックス(娘が父親に愛情を感じ、母親を憎む無意識的感情)の原因である。

「(私はまだ子どもだから、)できない」と思ってしまう
「依存的で、自分で解決しようとしない」「自分の力で深く考えられない」「最後までやり遂げられない」「大事なところでよく失敗する」「いつも時間に遅れる」「うっかりミスを繰り返す」等、「できない人」の立場を取る
義務感や使命感が希薄(「昇進する」「リーダーになる」等、責任ある立場を任されるのが苦手)
自分のことしか考えていない
笑ってごまかす(できない事、失敗した事を楽しそうに話す)
甘えん坊キャラ(失敗しても許される)
舌足らずの喋り方をする
些細なことでよく口ゲンカをする(子どものような心理状態にいることが多いので)
容姿や振る舞い等が実際の年齢よりも幼い
子どもや子どもっぽい人を見ているとイライラする(子どもがライバル)
男性のロリータ・コンプレックス、女性のファーザー・コンプレックス
大人の迷子(になりやすい人)
時間に遅れる
(スーツを着た)大人が怖い
大人で粉薬が飲めない
嘔吐反射
刷り込みの場面

《成長してはいけない》は、自分の子どもが成長するに連れて、自分を必要としてくれる幼くて可愛い子どもでなくなってしまうことを恐れる親によって刷り込まれる。

「お前はまだ小さくて幼いから、出来ないのよ。お母さんが代わりにしてあげるね」と親が何でもしてしまうので、子どもは、「成長しない方が愛される」「私が成長するとお母さんが悲しむ」と思い込み、《成長してはいけない》が刷り込まれる。

過保護、過干渉の親に育てられた
末っ子に生まれて、「お前はまだ小さいから」と親が代わりに何でもしてくれた
自分が無力で何もできないと、親が喜んだ
子どもっぽい振る舞いをしたときだけ、「子どもらしくてかわいいね」と条件付きで可愛いがられた
親がいつまでも小さい頃の話ばかりをする(「あの頃は可愛かったねえ・・・」)
何かをしようとすると、「子どものくせに・・・」と否定された
子どもの頃、親から何の期待もされずに育った
子どもの頃、両親からまったく可愛いがられなかった
性的、肉体的虐待を受けた
親から「大人は大変だ」と聞かされてきた
子どもの頃に母親が父親に依存している姿を見て育った

(3−3)《セクシーになってはいけない》

主訴

《セクシーになってはいけない》を持つ者は、自分や他人のセクシーな面に対して、嫌悪感や罪悪感といった否定的な感覚を感じる。心の中で感じている《セクシーになってはいけない》という感覚に反抗して、過剰にセクシーな格好をする者もいる。

セックスが怖い。セックスに対して嫌悪感や罪悪感を感じる。セックスをすると咳や涙が出る
セックスをしてあげている感じがする(自分が楽しめないので、相手が体目的のように感じてしまう)
(女性の)不感症
セクシーな女性に対して嫌悪感を感じる
服を選ぶときにイヤラシク見えないかどうかを気にする
下ネタを異常に嫌う
セックスについて無関心、無頓着、無防備(たとえば、避妊しない。自分が女性として性的な対象として見られている意識がなく、誘われたらすぐについて行く等)
性的な事について自分は関係ないと思っていて、まったく理解しようとしない
過剰にセクシーな格好をする
刷り込みの場面

《セクシーになってはいけない》は、父親が娘に与える場合がほとんどである。身体的に成長してセクシーになっていく娘に対して恐れを感じた父親が、娘のセクシーな振る舞いやセクシーな身なりを禁止する、突然ハグをしなくなる、一緒にお風呂に入らなくなる等。すると娘は、「セクシーになると、父親から愛されなくなる」と恐れを感じ、《セクシーになってはいけない》が刷り込まれる。

自分の身体的な成長を親が嫌がった
身体的に成長してセクシーになっていく娘に対して恐れを感じた父親が、娘と距離をとるようになり、娘は「セクシーになると父親から愛されなくなる」と思い込んだ
親の性的ないやらしい言葉や態度に嫌悪感を感じた
家庭内で性的な話題はタブーだった
性的虐待、性的いたずら、痴漢、レイプ(「自分がセクシーだからこんな痛い目に遭ったのだ」)
親のセックスを見てショックを受けた

(3−4)《考えてはいけない》《自分が考えたいように考えてはいけない》《特定のことについて考えてはいけない》

主訴

《考えてはいけない》を持つ者は、「誰か他の人が代わりに考えてくれるから、自分は考えなくてもいい」と心のどこかで思っている。そして、自分の意見を求められたときや、何か問題が起こって解決方法を考えなければならないときに、頭が混乱してパニックを起こす。考える作業に対して苦手意識を持っていることが多い。

《考えてはいけない》が派生した形として、《自分が考えたいように考えてはいけない(誰かが考えるように考えないといけない)》や《特定のことについて考えてはいけない(お金、遊び、仕事、セックス等)》がある。

「結論が出ないように、一番大事なところは考えないようにして、あまり関係のない周辺のことばかりを考える」「どのように考えるのが一番良いか、考える方法を考える」という者もいる。

自分の考えを求められたり、考える場面になると、頭の中が真っ白になる、頭が混乱する
自分の意見がない
自分で決められないので、「どうしたらいいですか?」と人によく聞く
考える前に感情的になってしまう。たとえば、キレる、悲しくなる等(親のモデリング)
考えることを後回しにする
特定のこと(お金、遊び、仕事、セックス等)について考えられない
「私は考えるのが苦手」「私は頭が悪い」と思っている
考えるばかりで、結論を出せない
結論が出ないように、一番大事なところは考えないようにして、あまり関係のない周辺のことばかりを考える
刷り込みの場面

「他のことはお母さんが考えるから、あなたはただ勉強して、いい学校に入ることだけを考えていなさい」のように、子どもの考える能力を禁止したり、低く評価する親によって刷り込まれる。

何でも先回りをして子どもに指示を出す過保護で過干渉な親との関わりを通して、子どもが自分で考えるのを止めてしまう場合も多い。

考える前にすぐに感情的になってしまう「考えられない親」をお手本とする場合もある。

「ああしろ、こうしろ」と指示的で支配的な親に育てられた
「あなたは私の言う通りにさえしていればいいのよ」「お前は私の言う
通りにしないと失敗するよ」というタイプの親だった
自分で考えたことに対して、親が否定的、批判的だった
自分の考えを馬鹿にされたり、笑われたりした
「○○(お金、遊び、セックスなど)のことは考えてはいけない」と教育された
感情的になりやすい親だった(考えられない親)

(3−5)《自由に行動してはいけない(自分の人生を生きてはいけない)》

主訴

《自由に行動してはいけない(自分の人生を生きてはいけない》を持つ者は、「自分がすることの中に正しいことや安全なものは何一つない」と感じて、不安や恐れがあるために、やりたいことを行動に移せない。

自分一人では何をどうしたらよいかがわからず、いつも指示してくれる人を見つけようとする傾向がある。自分を信じることができないために、些細なことでも決断を下す際に非常に苦労をする。反抗的に現れた場合には、不安を抑圧して、どんどん行動する。

自分の考えで行動しようとすると、恐怖を感じる、身体が固くなる、心臓がドキドキする
自分に自信がないために、やりたいことができない
やりたいことが見つからない(やりたいことをさせてもらったことがないので、「やりたい」という気持ちを抑圧しているから)
やりたいことをやると罪悪感を感じる
計画はするけれども、実際にはやらない
考えるばかりで、行動しない
やらない言い訳、できない言い訳が多い
やる前から「自分にはできない」と思ってしまう
仕事の着手が遅い
心配性で、優柔不断。決めるまで悩んで、決めた後も悩む
「これでいいですか?」と他人に行動の許可を求めたがる
ひきこもり
強迫性障害
強迫性・依存性パーソナリティ障害
刷り込みの場面

《自由に行動してはいけない(自分の人生を生きてはいけない》は、子どもなら誰でもやっている遊びや活動をやらせない心配性で恐怖心の強い親によって刷り込まれる。

「まだ小さいから」「子どもには危ないから」という理由は、一見すると子どものためを思っているようだが、実は、親自身が持つ不安や罪悪感を、自分の子どもに対して押し付けているだけである(「私は自分が失敗するのが怖い。だから、お前も私のように失敗を怖がりなさい」)。

心配性で、過保護、過干渉の親に育てられたために、「自分がすることで、正しいことや安全なことは一つもない」「もう自分で考えるのは面倒だから止めてしまおう」と思い込み、いつも何かを指示してくれる人を見つけるようになった
「ああしろ、こうしろ」と指示的で支配的な親に育てられたために自立性を失い、「私が行動すると間違う」「私は行動してはいけない」と思うようになった
親が心配性で恐怖心が強く、行動をしない人だった
「一度失敗すると取り返しがつかないよ」と言われて育てられた
失敗すると責められた
上手くできてもほめられなかった
いじめや虐待を受けたことがある

(3−6)《親から離れてはいけない》

主訴

《親から離れてはいけない》を持っている者は、「親から離れることはとても悪いことだ」「親から離れると、私は(または親は)生きていけない」といったように、親から自立することに対して恐れや罪悪感を感じる。反抗的に、依存している対象の人物から、過剰に離れようとする場合もある。

親離れが恐い
親離れできない(「私が離れると、お母さんがかわいそう・・・」)
独り暮らしができない
用事が済んだらすぐに家に帰らないといけないと思ってしまう
(旅行先等で)親が一緒にいないと不安になる
(旅行先等で)親が一緒にいないときだけ自由に感じる
離れると親に攻撃されそうで恐い
(親子)共依存
摂食障害が治らない(私の病気が治ってしまうと、母親から離れなくてはならない)
分離不安障害
刷り込みの場面

《親から離れてはいけない》は、子どもが自分から離れて自立してしまうことに恐れを抱き、子どもを思いのままにコントロールしようとする過保護、過干渉な親、子を離そうとしない親によって刷り込まれる。

子どもの世話だけが生きがいで、子どもを手元から放したくない母親から、「お前がいなくなるとお母さんは・・・」と言ったようなメッセージを(暗に)与えられてきた
心配性で過保護、過干渉な親から、「私から離れると危険だよ」「私から離れると酷い目に遭うよ(遭わせるよ)」「もし、お母さ
んを裏切ったら・・・」というメッセージを与えられてきた

《精神・身体》に関するリミッティング・ビリーフ

(4−1)《健康であってはいけない》

主訴

《健康であってはいけない》を持つ者は、「ストレスや不安があるとすぐに体調を崩す」「人からの注目や愛情が不足すると病気になる」「慢性的な体調不良(たとえば、疲れやすい、身体が重い)」「風邪をひきやすい」等の症状を示す。

また、自分の健康に対する責任感がなく(低く)、病気になっても休むことなく、無理をしてがんばり続ける者もいる。

身体に特別悪いところがあるわけでもないのに、よく病気になる
ストレスや不安など、嫌なことがあると体調を崩す
大事なときに限って熱を出したり、怪我をする
人からの注目や愛情が不足して寂しくなると、病気になったり、怪我をする
医者から「どこも身体に悪いところはない」と言われたのに、実際に体調が悪い
病気を治したいのに治らない
慢性的な体調不良、全身のだるさ
よく風邪をひく
病気になっても休まない(休めない)
刷り込みの場面

《健康であってはいけない》は、「普段は仕事で忙しくて家にいない母親が、病気になったときだけそばにいてくれた」「いつもは怒ってばかりで厳しい父親が、病気になったときだけやさしくしてくれた」「病気になったときだけ、嫌なことをしなくても許された」といった経験を通して刷り込まれる。

また、病気がちな親をお手本にして、《健康であってはいけない》が刷り込まれることもある。

子どもの頃、病気の時だけ優しくしてもらえたり、注目してもらえた
身体の不調を訴えると、学校や仕事など、嫌なことを回避できた
病気になると、「もっと勉強しろ」「もっとがんばれ」等、嫌なこと言われずに済んだ
幼少の頃、両親が病弱で寝込んでいたり、何度も入院する姿を見て育った
病気になると、怒られる(反抗的決断になりやすい)

(4−2)《正気であってはいけない》

主訴

《正気であってはいけない》を持つ者は、「無意識に自分で自分を追い詰めて気を狂わせようする」「変わった言動によって周囲の注目を集める、周囲をコントロールしようとする」といった特徴を示す。

気がおかしくなりそうになることがある
(無意識に)自分で自分を追い詰めて、気を狂わせようとする
自分の気がおかしくなりそうなほどの絶望的な悲しみや恐れを覆い隠すために怒りや憎しみを持ち、自他を傷つける
変わった行動や発言をして、注目を集める
暴れたり、叫んだりして、周囲をコントロールする
人から「あなたは変わっている」「あなたは変だ」と言われると嬉しい
「私は他の人と違って、どこか変わっている」と感じている
人がやらないような職業に就く
性的に変わった趣味を持っていたり、「自分は変態ではないか」と思うことがある
動物を虐待したり、殺したくなる。または、実際にやっている
統合失調症などの精神病を持つ親の子どもが、本人は精神病でもないのに、精神病者と同じように現実を歪曲して認識したり、おかしな発言や行動をする
ことさらに普通に振る舞っている感覚(「私はスーパーノーマルです」)
刷り込みの場面

もし子どもが頭がおかしいかのような行動をしたときだけ周囲から注目されたり、他人の頭のおかしな行動の真似をしても矯正されないとき、《正気であってはいけない》が刷り込まれる可能性がある。

精神病の親や親戚の言動をお手本にして身につける場合もある。統合失調症の親を持つ子どもの中には現実の認知に困難を伴う場合があるが、これは親からの《正気であってはいけない》のメッセージの影響である。そうした子供たち自身は、本当は精神病ではないため、サイコセラピー(心理療法)で矯正することが可能である。

頭がおかしいかのような発言や行動をしたときだけ、人からほめられたり、注目をしてもらえた
統合失調症等の精神病を持つ親や親戚のおかしな発言や行動を真似しても誰からも直されなかった
両親から愛してもらえない事実に直面して気が狂いそうになるほどの絶望的な悲しみ、恐れを感じ、そうした絶望的な悲しみや恐れを感じなくても済むように、自分や他人に対して怒りや憎しみを持つようになった(「私はいたって普通だ。お前は私の気をおかしくさせる気か!」)

(4−3)《感じてはいけない》《自分が感じたいように感じてはいけない》《特定の感覚、感情を感じてはいけない》

主訴

感情を感じない場合と、身体的感覚(痛み、空腹等)を感じない場合の2種類がある。さらに、感情を感じない場合は、そもそも感情を感じない場合と、感情は感じるけれども、それを表現できない場合の2種類に分かれる。

また、感情を感じない場合には、いかなる感情をも感じない場合と、「男の子は泣いてはいけません(→「悲しみ」の抑圧)」「女の子が怒るなんてはしたない(→「怒り」の抑圧)」のように、「悲しみ」や「怒り」といったある特定の感情のみ禁止する場合との2種類がある(後者の方が多い)。

「怒り」「悲しみ」「恐れ」「喜び」「幸せ」を感じない
自分の感情がわからない
周りの人の感情に合わせてしまう(「あーそうよね」)
人と同じ感情を感じてしまう(同一化)
思考ばかりしている
周囲の出来事に対して、いつも第三者の立場で客観視している
代理感情を使う(たとえば、「悲しみ」を抑圧して、その代わりに「イライラ」する。「怒り」を抑圧して、その代わりに「ニコニコ」する等)
痛みや満腹感、空腹感、味覚(甘い、辛い)といった「感覚」を感じない
摂食障害(《自分が感じたいように感じてはいけない。母親が望むように感じなければならない》というリミッティング・ビリーフによって自分の感情を抑圧している女性が、過食・嘔吐を繰り返すことによって、感情を抑え込んだことによるストレスを発散する)
心身症、自律神経失調症
「怒り」の抑圧:「胃痛」「神経性嘔吐症」「頭痛」「腰痛」「かゆみ」「不整脈(心臓関連)」「関節リウマチ」「突発性難聴」「失声」等
「恐れ」の抑圧:「何も感じなくなる」「強迫観念」「強迫行為」「潔癖症」「恐怖症」等
「悲しみ」の抑圧:「自律神経失調症」「頭痛」等
刷り込みの場面

《感じてはいけない》は、自分自身が感情を我慢して抑え込む親によって刷り込まれることが多い(「人前で感情をあらわにして、取り乱してはいけません」)。

家庭によってはあらゆる感情の表出を禁止する場合もあるが、もっとも多いのは、ある特定の感情のみを禁止されていて、他の感情は許されている場合である(「男の子は泣いてはいけません(→「悲しみ」の抑圧)」「女の子が怒るなんてはしたない(→「怒り」の抑圧)」等)。

身体的な感覚を《感じてはいけない》は、しばしば乳児期の早期に刷り込まれるもので、強力に刷り込まれると精神病や深刻な問題となって現れる可能性がある(たとえば、空腹感を禁止された子どもが摂食障害になる等)。

親から特定の感情を感じることを禁止されていた(「男の子は泣いてはいけません」「女の子は怒ってはいけません」)
親が感情的になる人を否定していた
親のために感情を表すことをがまんした(「私が泣くと、病気のお母さんが辛くなるから」)
親の感情の面倒をみてきた(母親がうつ病だったので、私はいつもニコニコして何でもないように振る舞った)
感情を出すと抑えが効かなくなる自分に恐怖を感じた
感情を出したときに笑われたり怒られたりした
いつも怒ってばかりいる短気な親が怖かった(「怒ることは悪いこと」と決めた)
いつも怒ってばかりいる短気な親が嫌だった(「私は絶対に怒らない」と決めた)
いじめや虐待を受けて、あまりの辛さから、すべての感情・感覚を抑圧する(感じないようにする)ようになった
両親が感情を自然に表現しない人だった
両親が幸福感を感じたり、ものごとを楽しんだりしない人だった

(4−4)《楽しんではいけない》《幸せを感じてはいけない》

主訴

《楽しんではいけない》を持つ者は、「何事も楽しめない」「楽しむことに罪悪感を感じる」「楽しむことを後回しにする」といった特徴を示す。また、いつも「楽しいことを探し」をしていて、楽しいことをたくさんしようとするが、心から楽しめない者もいる。

何をしても楽しめない
心から楽しいと思ったことがない
楽しいことをする前か、した後に罪悪感を感じる
楽しいことをする前か、した後に体調を崩す
自分の好きなことややりたいことがわからない
「ラクをしてはいけない」「人生は苦しいものだ」と思っている
わざわざ苦労をして、やりがいを感じる
いつも「楽しいこと探し」をしている
睡眠障害(入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒) →《幸せを感じてはいけない》
過眠症(ナルコレプシー) →《楽しんではいけない》
刷り込みの場面

「親が不幸に耐え、楽しむことをがまんしている」「親が病気でかわいそう」といった状況下で、「自分だけが楽しんではいけない」と心に決めることで、《楽しんではいけない》が刷り込まれる。また、楽しむことをしない親から「人生とは苦しいものだ」「苦労は金を出してでも買え」的な価値観を刷り込まれる場合もある。

親に悪いから、「自分だけ楽しんではいけない」と思った
親が人生を楽しまない人だった
「調子に乗って喜んではいけない」等と親に言われた

(4−5)《くつろいではいけない》

主訴

《くつろいではいけない》を持つ者は、くつろぐことができず、何もせずにのんびりと時間を過ごすことに罪悪感を感じる。また、見かけ上、身体を休めてくつろぐことはできるけれども、心理的にくつろげない者もいる。

のんびり、だらだらできない
のんびりすると罪悪感を感じる
横になって身体的に休むことはできるが、心からくつろげない
ついガンバリ過ぎてしまう
くつろいでいると、自分の居場所がないと感じる
いつも疲れている、でも、休めない
肩コリ、首コリ(つねに過緊張の状態)
メランコリー型(定型)うつ病(うつ病で休んでいる自分を責める。うつ病なのに休養できない)
刷り込みの場面

自分自身に厳しく、全くくつろがない親から、「くつろぐことは良くないこと」「努力なくして成功なし」といった価値観を刷り込まれた場合が多い。また、休むことなく、いつも大変そうにがんばっている親の姿を見て、「自分だけがくつろいではいけない」と心に決める場合もある。

くつろいだり、だらだらしていると怒られた(「だらだらしてないで、ちゃんと勉強しなさい」等)
「自分だけくつろいではいけない」と思った(なぜなら、「大変そうにしている親に悪いから」等)
両親がくつろいだり、だらだらしない人だった(「平日は仕事、週末も家事で働きずくめの母親」)
親からの汚染(「努力の先に栄光あり」「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」等)

《自己重要感》に関するリミッティング・ビリーフ

(5−1)《重要な存在であってはいけない》

《(何かができる自分には価値があるが、)ありのままの自分には価値がない》

主訴

《重要な存在であってはいけない》を持つ者は、「自分には価値がない」という感覚を持ち、自分に自信がなく、劣等感が強く、上司やリーダーなどの責任ある立場を任されると緊張して本来の力を発揮できない。

一方で、「自分には価値がない」という感覚に反抗し、偉大で重要な人物として人から認められるための過剰な努力をしたり、過剰な競争心を燃やして勝ち負けにこだわり、自分が重要な人物であることを証明しようと躍起になる者も多い。

こうなってしまうと、周囲から見てどれほどの成功者であっても、本人の心が満たされることはない。

「自分には価値がない」と感じる
自信がない
劣等感が強い
すぐに「自分はダメ」と落ち込む
上司やリーダー等、責任ある立場を任されると緊張して本来の力を発揮できない
人前で緊張する
失敗を過剰に恐れる
人からの評価、人からどう思われるかが気になる
人の意見に流される。言いたいことが言えない
すぐに「自分にはできない」と思ってしまう
人からほめられても素直に受け取れない
自分のことが好きになれない
自分のためにお金を使えない
プライドが異常に高い
自分のすごさを人にアピールしたくなる
自分を他人と比較して、過剰に勝ち負けにこだわる
人からの批判、叱責に対して過剰反応する(不機嫌になる、落ち込む、攻撃で返す)
「ありがとう」「ごめんなさい」が言えない
刷り込みの場面

抑圧的で厳しい親から「お前はダメだ」「お前に大したことはできない」「子どもは黙っていなさい」等と言われ続けたり、無視をされたり、馬鹿にされたりすると、子どもは《重要であってはいけない》と思い込む可能性がある。

現在でも、長男と他の子どもとの間に差をつけたり、男の子を女の子よりも優遇する地方や家庭が存在するが、そのような場合にも、長男や男の子以外の子どもに《重要であってはいけない》が刷り込まれることがある。

いつも上から抑え付けられていて、自己主張を許されなかった。親が話しを聞いてくれなかった
「お前はダメだ」「お前にできるわけがない」といったように、親から否定ばかりされていた
いつも怒られてばかりいた
親から「(自分のことより、)もっと人のことを考えろ」と言われてばかりいた
何かができたときだけほめてもらえた
自分以外の他の兄弟、姉妹ばかり可愛いがられた

(5−2)《欲しがってはいけない》

主訴

《欲しがってはいけない》を持つ者は、欲しがることに罪悪感を感じ、自分の欲求を後回しにして他人を優先する。さらには、「欲しい」という欲求を完全に抑圧して、自分が欲しいものややりたいことがわからなくなってしまう者もいる。

また、本当に欲しいものはわからないにもかかわらず、それほど欲しくないものを欲しがる者もいる(そして、永遠に心は満たされない)。

自分が欲しいものを「欲しい」と言えない
自分の欲しいものがわからない
人に頼みごとができない(罪悪感を感じるから)
人を優先して考える。自分は二の次。「家族のため」「親のため」等と考えていることが多い
「どうしたいの?」と聞かれても答えられない。「何でもいい」と答えてしまう
自分のお金なのに自分のための物を買えない
自分の欲しい物を選べない(レストランでメニューを見て選ぶとき等)
自分の欲求を素直に出している人を見るとイライラする
いつも欲しい、何でも欲しいと悶々としている
刷り込みの場面

弟や妹のため、親や家庭の事情のために、欲しいものをがまんさせられたり、自らの意志で「欲しがってはいけない」と決心した経験を通して、《欲しがってはいけない》が刷り込まれる。

「あなたはお兄ちゃん(お姉ちゃん)だから」と言われて、いつもがまんばかりさせられた
親のため、家庭の事情のために、欲しいものをがまんしなくてはならなかった
両親から「欲しがってはいけない」「がまんするのは良いことだ」と言い聞かされた
両親が自分の欲求を口に出せない人だった

(5−3)《成し遂げてはいけない》

主訴

《成し遂げてはいけない》を持つ者は、あと一歩のところでやり遂げられない、成し遂げる途中で興味を失い止めてしまう、という特徴を持つ。

「成功すると、嫌われる、妬まれる、人が離れていく」等と言った理由で、「成し遂げてはいけない」と感じる者もいる。成し遂げるための行動を何もしようとしない者もいる。

いつも成功の一歩手前で失敗し、最後までやり遂げられない
「成し遂げてはいけない」「何かを達成しても、そのことを人に言ってはいけない」と感じる(なぜなら、「成功すると嫌われる、妬まれる、人が離れていく」)
何かを成し遂げようとすると、なぜか途中で興味を失い、止めてしまう。
すぐに「自分にはできない」と思ってしまう
成し遂げると(失敗しないと)、寂しくなる。悲しくなる(なぜなら、「人に振り向いてもらえない」)
刷り込みの場面

完全主義の親に絶えず批判されて育つと、子どもは「自分は何一つ満足にできない人間だ」と受け止めて、《成し遂げてはいけない》が刷り込まれる。

スポーツやゲームでいつも子どもを負かしていた父親が、子どもが勝った途端に止めてしまえば、子どもには「俺に勝つな。さもなければ嫌いになるぞ」と解釈され、これが子どもの心の中で《成し遂げてはいけない》というリミッティング・ビリーフに変換される、という場合もある。

完全主義の親から「お前は何一つできない奴だ」と言われて育った
失敗ばかりを取り上げて非難された
成功して目立ったらイジメにあった
親からほめられて物事を最後まで成し遂げた経験がない
成し遂げたときに、親が悲しんだ。親が寂しそうにした(「親の役割を取ってはいけない」と感じた)
失敗したときだけ、親が自分の方を振り向いてくれた
成し遂げたときに、親(親友)が離れていった。遊んでくれなくなった
親に勝負事で勝ったら、親に嫌われた。親の機嫌が悪くなった
親から「成功すると人に妬まれるからいけない」「出る杭は打たれる」等と言い聞かされた

(5−4)《成功を感じてはいけない》

主訴

《成功を感じてはいけない》を持つ者は、目標を達成しても、達成感を感じられない(富士山の登頂に成功しても、「自分はエベレストには登っていないから、まだ、まだ、もっと、もっと」と感じる)。

何をやっても、どれだけやっても達成感がない。「まだ、まだ」「もっと、もっと」と感じる
今、自分ができている事に気が付いていない
次々にやるべき事が出てくる
つねに「やるべきこと」をたくさん抱えている
やりすぎて失敗する(身体を壊して身も蓋もない)
次々やろうとして、転職を繰り返す。事業を拡大しすぎる(「まだ、まだ」「もっと、もっと」)
過剰にがんばり屋さん
ワーカーホリック(仕事中毒)
刷り込みの場面

子どもの頃に、何をどれだけやっても認めてくれない親から、「まだ、まだ」「もっと、もっと」「そんなんじゃダメだ」等と言われ続けると、たとえ何かを成し遂げたときでも達成感が感じられず、《成功を感じてはいけない》が刷り込まれる。

子どもの頃に、何をどれだけやっても親が認めてくれなかった
親からほめてもらったことがない
親から期待されずに育った


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